イラン人である私(ランディ・マッスル)が日本で暮らし始めてすぐに気づいたことが、日本のザクロと「天国の果実」とまで言われる故郷イラン(ペルシャ)産のザクロの違いでした。
見た目も、中身も、全く別の果物と言って良いほど異なっていたのです。
日本ではザクロが健康に良いと漠然と思われていますが、全てのザクロがそのような素晴らしい効果を持っているわけではありません。
ちゃんと産地ごとの違いと特徴を知って、健康のためにも是非イラン(ペルシャ)ザクロの素晴らしさを取り入れてみてください。
ザクロの原産地は、イランやトルコなど中近東で、その栽培の歴史は非常に古く、有史以前といわれています。
ソロモン王(古代ユダヤの王)は3,000年前、ザクロの果樹園を開いたといわれていて「神々がこのフルーツを好んだ」と書かれた古代の神話があるほど。
ザクロの原産地であるイランには、良質のザクロが自然に育つための恵まれた環境があります。
ザクロの栽培に適した風土とは、例えば次のようなものです。
砂漠と高原が多いイランは、乾燥した長い夏の気候(5月~10月)があり、昼間は灼熱の暑さですが夜は涼しくなります。
1日の寒暖差が激しく、これらの条件をすべて満たしているので、美味しいザクロの生育条件にピッタリなのです。
イラン産のザクロと日本産のザクロとでは、まず「実の大きさ」が違います。
それは気候が大きく関係しています。
海が近く雨が多い地域では、土壌の水分量が多いため、ザクロが熟れて皮が堅くなる前に果実が成長してしまい、栄養分が十分蓄えられないまま皮が耐えられずに実が割れてしまいます。
これが日本で実が割れたザクロをよく見かける理由です。
いっぽう、イランの気候は非常に乾燥していて土地に水分が非常に少ないため、ザクロの木は生き延びるために地面に深い根を張り、時間をかけて最大限の栄養を吸収しようとします。
ちょうどワイン造りでぶどう畑を敢えて厳しい環境条件にするのと似ていますが、イランではその気候がザクロの成長に理想的な環境を作ってくれます。
さらに、標高の高さと厳しい冬の寒さに害虫もつくことができず、一切農薬を使う必要がありません。
まさに「大自然の恵み」です。
その結果、皮が薄く、果実は十分に大きくなり、果汁も十分、種も小さく、栄養たっぷりで丸ごと食べることができるイランにしかない奇跡のザクロになるのです。
実の大きさや果汁の多さがイラン産と同等のものにアメリカ・カリフォルニア産のザクロがあります。
こちらは古来からの自然栽培ではなく、近年アメリカに輸入されて人工栽培で作られたザクロです。
気候が原産地とは異なるため害虫が付きやすく、その多くが農薬を使って育てられています。
産地 | イラン産 | カリフォルニア産 | 日本産 |
---|---|---|---|
実の大きさ | 大きい | 大きい | 小さい |
味 | 甘みと酸味のバランスが良い | 甘みが強い | 酸味が強い |
皮の厚さ | 薄い | 厚い | 厚い |
栄養価 | 高い | 低い | 低い |
農薬 | 使わない | 使う | 使わない |
「ザクロの種も食べてね」と言われると「えっ?」と思いませんか?
それもそのはず、日本産のザクロは果汁が少ない割りに種が堅く大きいため、ザクロを食べるとすぐに口が種だらけになってしまい、イラン人の私でさえ食べようとは思えません。
いっぽうイラン産のザクロはその理想的な生育条件から、ザクロの粒(種衣)の果汁が豊富で種が小さく柔らかいので、種まで美味しく食べられます。
イランの子どもは、ザクロを食べて種を吐き出そうとすると両親からひどく叱られます。
イラン産のザクロは、その種に最も美容や健康に良い栄養成分が含まれているからなのです。
イラン産のザクロが運良く手に入った場合は、必ず種まで食べるようにしてください。
イランでは自然種としてザクロが栽培されているので、1つの木でも日当たりによって、品質にばらつきがあります。
そのため市場では同じ産地のザクロでも当たりハズレがあり、何も知らない人が購入するとハズレに当たってしまうことがあります。
そこで、市場では品質を見極めることができるザクロ職人がいて、ザクロ職人に料金を払ってお願いすると、品質の良いザクロを選んでもらうことができます。
これは、品質の高いイラン産のザクロの中でも最高のものを買い付けたい私たち(nini)にとっても有り難い存在で、ザクロ職人のおかげでnini用に最高の製品を作ることができるのです。
イラン国内だけで700品種以上もあるザクロの中で、最も美味しく人気があるのがイラン中部マルキャズィー州サーヴェ産の「マラス」という品種です。
マラスとはペルシャ語で「最高」という意味で、その名の通り非常に美味しく、イランでは日本の夕張メロンのような人気ブランドになっています。
マラス種には酸味のあるタイプと甘みのあるタイプがあり、どちらも市場に出回るとすぐに売り切れてしまうほどの人気があります。
不思議なことに、マラス種の木をサーヴェ以外の土地に植え替えても、サーヴェ産のような素晴らしい味にはなりません。
イランの中でもサーヴェはさらに特別なザクロに適した土地であるということなのです。
現在では、サーヴェ産のマラス種のあまりの人気に世界中から先を争って業者が買い付けに殺到するほどで、現在では非常に高値で取引されています。
マラス種の買い付けは、なんとザクロの花が咲く5月の段階でほぼ決まってしまいます。
実をつけるまで待っていては、まず手に入れることができません。
手に入るとしても非常に高価なものになってしまいます。
マラス種の買い付けでも専門のザクロ職人が花を見て、その後の果実の品質を予想し判断します。
これは本当に職人技で、私もnini用に買い付ける際には、ザクロ職人といっしょに花を見に行き、マラス種の中でも最高品質のものを常に買い付けられるようにしています。
このように世界中で人気がある理由は、イラン産のザクロ(特にマラス種)の利用価値が他国産よりも非常に高いためです。
イラン産のザクロは自然で育てられているため、皮も、種も含めて丸ごと利用することができます。
この「丸ごと」というのが非常に重要で、イラン産のザクロには皮にも、種にも、美と健康に良い豊富な栄養素が含まれているのです。
イラン産のザクロの種には、他の果物には無い成分である「プニカ酸」をはじめ、リノール酸、オレイン酸、パルチミン酸、ステアリン酸が豊富に含まれています。
また、ザクロの果皮を乾燥させたものは古来よりイランでは漢方として煎じて飲まれてきました。
これも農薬を使っていないイラン産だからこそ利用することができるものです。
もちろん果実の部分にもカリウム、葉酸、ビタミンCなどが含まれており、エラグ酸を主体とするポリフェノールもたっぷり。
いかにイラン産のザクロが他の国のものと違うか、お分かりいただけたかと思います。
残念ながら今の日本ではカリフォルニア産はよく見かけるものの、イラン産のザクロを手軽に購入することは出来ません。
高級スーパーにまれに見かけるぐらいで、見かけたとしてもマラス種ではないものが高価で売られています。
そこで私は、故郷の宝物であるイラン産ザクロを日本の方にぜひ取り入れてもらいたいという思いから「nini」というブランドを立ち上げて、マラス種のみで作ったザクロペースト(ザクロの原液)を作りました。
niniのザクロペーストはサーヴェ産マラス種を100%使い、現地の工場で種も皮も含めて丸ごと絞っているので、栄養分が全て含まれています。
まさに「食べる美容液」と呼べるものです。
いくらイラン産のザクロが栄養価が高いと言っても、続けられないとその効果も最大限に発揮できません。
そこで、栄養分にこだわるのと同じくらい、味にもこだわって「美味しさ」を追求しました。
甘みのあるマラス種と酸味のあるマラス種を試行錯誤して絶妙の割合でブレンドし、水やお酒で割って飲むのはもちろん、サラダドレッシングや肉料理にかけるソースとしても非常に美味しくいただけるようにしています(イランでは調味料としてもザクロは大活躍しています)。